第15回 言語習得
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目標 & ポイント
言語習得について理解する
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成人学習について理解する
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1. 言語の習得
本章で扱うもの
言語習得
基本的には母語(第一言語)の話し言葉の習得について検討する
外国語の習得については、バイリンガルやトリリンガルなど多言語習得についての研究の必要性も増している
たとえば松井, 2018
多くの場合、外国語の学習であるので後述
話し言葉の習得の理論
大枠としては発達の理論と同じように想定されてきた
生得説や経験説、相互作用説
言語習得の順序については大枠を検討するのみ
「何歳何ヶ月でこのような言語習得が見られる」
このような記述はできない面もある
個人差が大きい対象
新生児
いわば「前会話的な行動」
顕著な行動としては泣くという行動
年長者は空腹、暑い/寒い、不安と解釈して話しかけ、ミルクをあげたり、部屋の温度を調整したり、抱っこしたり..
の環境
年長者から新生児への話しかけ
新生児の自発的な行動が周りの年長者たちに訴えかけることもある
様々な人工物や場合によっては動物もいる
寝かされている環境も一様とは言えない
新生児が目覚めた時に、年長者が周りにいないこともある
サーカディアンリズムで日常生活を送ることはできない
生後2ヶ月頃
クーイングと言われる発声が見られるようになる
話し言葉の産出には、発声のための器官を自ら動かすことが必要となる
その最初の段階として、発声のための器官が生育して、「あー」「うー」といった母音状の音を発することができるようになると言われている
その際に、養育者が周りにいれば、その発声を意味づけして、何か意味のある言葉を喋ったと喜んで、その言葉を乳児に話したり、といったこともするだろう
これは会話における話者交代(turn taking)の原初的な形態とみなすこともできる
生後3ヶ月頃
喃語
乳児が、発声器官を自ら制御して発声する最初の現象というように解釈して良いだろう
基本的には、子音を含む音や母音が連鎖した音を発生すること
ま行
唇の開閉で発声が可能
ママ
ぱ、ば
破裂音
パパ
子どもに向けられた発話(child directed speech: CDS), 乳児に向けられた発話(infant directed speech)
乳児期までの子どもに対する養育者の発声は、通常の発声よりはピッチが高く抑揚をつけた短いものであることが多い
子どもの注意を引きやすい発話であることも知られている
乳児はすべての音素を弁別できる
生後1年くらいのうちに、母語にはない音素を弁別できないようになっていく
セグメント問題
話し言葉は発話音声の連続であるが、単語や句などの統語論的な単位がある
発話の連続を区切って、認識すること、さらには発声することができるようになる必要がある
音声の連続から音韻、単語、句、文を切り出す
乳児期の終わり頃、生後1歳~生後1歳5ヶ月まで
初語
初めて発する意味のある単語
いわゆる幼児語
まんま、うまうまなどが多いと言われる
初語は単語1つであるので、これ以降は一語発話や一語文と呼ばれる時期となる
乳児が自分の名前を幼児語で発声したり、形容詞や否定形なども「一語」で発声される
2歳頃まで
二語発声や二語文
単語と単語を並べて、文らしき発声が見られるようになる
語彙の爆発的増加(vocabulary explosion; 語彙爆発 word explosion)
幼児期前期の2歳頃から
単語を獲得しようという時期に入ると言われる
言語と世界との関係を理解する萌芽的な段階といえる
世界を切り取り言葉と関連付ける、ものを言葉で名付けるという意味論の世界に徐々に入っていくと解釈することができるだろう
共同注意
養育者、乳児、環境にあるものという三者関係の中で、乳児と養育者とで当該のものに対して注意を向ける
それに言葉を割り付けるということが繰り返される
「会話的な状況」に入っていると解釈してもよいだろう
その際に、乳児と養育者とが同じものを注視したり、身振り手振りで指し示したり、という非言語的な行動と、
乳児と養育者とが発声するという言語的な行動とが同期して見られる
いわゆる多語文や従属文が見られる
3歳頃
接続詞なども使えるようになり、構文としても整えられていくようになる
おおよそ4歳頃まで
母語発話としては一応の完成期を迎えると言われており、日常生活で支障のない会話ができるようになる
さらに事態を複雑にしていること
乳児期には、絵本の読み聞かせや、各種ICT機器の利用が始まっている
同時に、お絵かきや玩具での遊びも開始している
保育園や幼稚園への入園、他の乳幼児や保育者との関係が始まっている場合もある
保育の現場であるが制度に基づいた機関であり、制度的な学習であると言ってよい
言語習得については、乳児期後期、初等教育への入学前までで、ほぼ完成すると捉えておこう
それ以降の言語習得については、むしろ、学校教育における制度的な学習が占める割合が大きくなる
2. 言語習得の熟達ということ
言語によって実現されている心理的な機能
概念形成、推論、思考、問題解決
言語習得というよりも、「知覚・認知心理学」で対象としている主題
概念形成
語彙爆発
新しい語彙を習得するのは生涯にわたって続いていく
新しい知識、経験をするごとに、それに付随する概念形成をし、その概念に対応する語彙を記憶して、自分から利用できるようになっていく
高齢期になると「老人語」を使って自らを表現することにもつながっていくだろう
外国語学習
言語の4つの側面から検討することができる
いずれも知覚運動学習の側面から、その熟達を図ることができる
対連合学習
概念形成ということでは、母国語と外国語との間で、学習する概念の対応関係を学ぶ
語彙のレベルから、文や文章のレベルでの学習になってくると、当該の外国語での「推論」や「思考」についての学習になる
外国語学習では、効率を無視すれば、高齢の学習者でも相応のレベルに達することができる
母国語での臨界期や感受期に相当する時期はないといえる
プログラミング言語の学習
自然言語と同じ用に、語彙や統語などの要素を積み重ねて学習していくことが大切
一方で、プログラミング的思考を養うことが目的であるとも言われる
その意味はやはり推論や問題解決ということ
言語習得の熟達とは、活動の量と質とが高まっていくこと捉えることができる
活動理論からの学習の分類においても、制度的な学習でも非制度的な学習でも、それぞれの活動の現場での言語行動の熟達を考えることは可能
真の熟達とは
叡智(wisdom)か?
暗黙知、言葉では表現数rのが困難な知の側面も関連してくる
複数の領域での熟達者、あるいはすべての領域をカバーしている熟達者か?
エリート?
エリート理論
政治学や社会学
多くの国でエリート育成のための教育機関があることも事実
3. 成人学習について
成人学習(adult learning)
学校教育が終わった後に始まる、そうして、各学習者の死まで続く、そのような学習を対象
情報化社会
人間は社会の変化に適応していくことが常に求められている
生涯にわたって、今までの経験をもとにして、適応をし続けていく、そのための学習を継続していく、そのような人間の心理の「機能」と「構造」を研究する領域
成人学習に関する理論や実践を3つの観点から総括(岩崎, 2019)
1. 学習プロセスを充実させる
本科目では認知のプロセスと結果を区別してきた
成人学習では、学習プロセスの充実が重視される
加齢(エイジング)に伴う生物学的な変化を受け入れつつ適切に年齢を重ねることが大切
自分の死を意識するようになることで、高齢になるほどに、客観的なクロノス時間から主観的なカイロス時間への時間感覚の重点が変化する
様々なライフイベント、特に危機的な状況を経験することで、その危機を乗り越えるというのは、より深い学習がなされたといえる
経験の履歴
成人学習に置いては、学習資源として経験を捉えている
成人学習における動機づけ
自己実現欲求
内発的動機づけ
2. 学習を理論化する
ペダゴジー(pedagogy)
子どもに対する教授学習法を論じる
アンドラゴジー(andragogy)
成人の学習について
変容的学習(transformative learning)
自分の経験を自分で意味づけて、自分の価値体系や価値基準を変容させていくことを重視する
ナラティブ学習(narrative learning)
人生について語ること、そして語られたものや書かれたものを重視する
論理科学様式/ナラティブ様式
ブルーナー(1998)の思考様式の区別
ルール支配行動、言語行動
技能学習
成人学習では身体化された学習として重視されている
3. 学習を実践する
成人学習の成果は、職場や地域での実践に活かされることが常
職場や地域での問題を解決するために成人は学習するということ
組織における学習
活動理論
ヴィゴツキーの発達の最近接領域
認知的徒弟制
実践コミュニティ
越境学習
学習する組織、職場を超えて学習する
協調学習
地域や職場という現場で、他者とつながり協調学習を実践していく
成人のキャリアも偶発的に決定されるという考え方もある
そのような状況においても自分の人生を設計することの大切さも認識されている
岩崎(2019)の指摘しているとおり、成人学習の考え方に共通しているのは
「人間には自己実現や成長に対する根源的欲求があるという前提である」
4. 「学習・言語心理学」のまとめとして
言語の熟達の最終形あるいは目標値については、成人学習における「自発的な自己決定」
言語の熟達とは、科学技術の進歩であると捉えることができる
科学技術に対する批判として、その細分化があげられる
科学技術の対象が言語化・道具化できるほどに細分化されていく
科学技術は、研究者や技術者が自分のアイデアを言語化したり道具化したりして、事物として表現しない限りは進歩しない
研究対象について
行動分析学
新行動主義、認知心理学の立場からも検証
刺激S―有機体O―反応Rの連合における「有機体O」としての情報処理プロセス
活動理論
行動分析学の立場と近しい